米屋の主が【令和の米騒動】で想うことを独り言。つぶやいてみた。


お米の値段、上がりすぎてない? 正直に話します。

みなさんもご存じの通り、お米の価格が急激に上がっています。

コメ売り場の棚を見て「え、こんなに?!」と驚いた方も多いんじゃないでしょうか。

でも実は、この「価格高騰」はある日突然起きたことじゃないんです。

ずっと水面下で積み重なってきた問題が、ついに表に吹き出してきた

——それが今、起きていること。

米屋の主として毎日お米と向き合っている立場から、正直なところをお話しさせてください。


高すぎても安すぎても、お米は続かない。

価格についていうと、実はこれ、上がれば済む話じゃないんです。

高くなりすぎると…… 「高くて買えない」「パンや麺でいいか」となって、消費者のコメ離れが進みます。

これは私たちが一番恐れていること。

そして、残念ながら、数字を見るともうすでに始まっています。

米穀機構の調査によると、

家庭内のコメ購入量は2024年4月から11月まで8か月連続で前年同月を下回り、

11月には前年比11.7%減という大きな落ち込みを記録しました。

民間調査でも、価格高騰を受けて「お米を買わなくなった」と答えた人が9%。

さらに「銘柄にこだわらなくなった」が41%、「特売時だけ買うようになった」が32%と、

消費者行動が確実に変わっています。

ちなみに、日本人1人あたりのお米の年間消費量は、

ピーク時の1962年には118.3kgだったのが、2024年度には53.4kg

——実に半分以下にまで減っています

(農林水産省調べ)。

長期的なコメ離れに、価格高騰が追い打ちをかけている構図です。

安すぎると…… 今度は生産者が「こんな価格じゃ、採算が合わない」となってしまう。

農家さんから「時給換算したら10円にもならない」「赤字になるならコメなんて作るのはアホらしい」という声を、

何度も聞いてきました。

そして、これが笑えない話なのですが——

「自分で作るより、買った方が安いんだよ」という声まで聞こえてきます。

手間も時間もかけて育てたお米が、市場では自分の生産コストを下回る価格でしか売れない。

そんな理不尽な状況が、長年にわたって続いてきたんです。

じゃあ「ちょうどいい価格」ってどこ???

というと——これが本当に難しい。

お米も自由経済の相場で動いているので、価格は需要と供給によって決まります。

「消費者にも農家さんにも優しい価格帯」を維持するのは、難しい綱渡りなんです。

お米は以前より食べなくなったとはいえ、やはり国民が食べて生きていくのに必要な生活必需品のひとつ。

なので、ちょっと需給の変化で急激な相場の変化をします。


そもそも、なぜお米が足りなくなってるの? 5つの構造的な原因

「なんで急にお米が不足してるの?」と思っている方も多いと思います。

でも繰り返しになりますが、これは”急”じゃない。何年もかけて積み重なってきた問題です。

① 「作るな」と言われ続けた歴史(減反政策)

1970年代から長年にわたり続いた「減反政策」。

引用:政府官邸より

過剰な米の生産を抑えるため、国が農家さんに「田んぼを減らしてください」と求めてきた政策です。

名称や形が変わりながらも、実質的にはこの流れは今も続いています。

② 35年間、下がり続けた米の価格

数字で見るとよくわかります。

米の農家手取り価格(60kgあたり)は、1990年代のピーク時と比べて、現在は約40〜50%にまで落ち込んでいます。

一方で、農業機械の燃料代、肥料代、農薬代はどんどん上がっています。

コスト増×価格低下のダブルパンチ。これが長年続いてきた生産現場の現実です。

③ 生産者の高齢化と深刻な人手不足

農業従事者の平均年齢は現在68歳を超えています(農林水産省調べ)。

真夏の炎天下での草刈り、腰をかがめての田植え、重い機材の操作——

正直、体力的にも本当にきつい仕事です。

にもかかわらず、儲からないから若い人が入ってこない構造が続いています。

④ 後継者がいない問題

「お父さん、この田んぼは誰が継ぐの?」「儲からないのに、子どもに継がせたくない」

こんな会話が、農村では何年も前から当たり前のように交わされています。

農家を続けることへの希望が持てない状況で、後継者が育つはずもありません。

⑤ インバウンド・輸出需要の急増も一因

あまり語られませんが、近年の訪日外国人の増加と、日本産米の海外輸出拡大も、需給を引っ迫させた要因のひとつです。

コロナ禍で抑えられていた需要が一気に戻ってきた2023〜2024年。

供給側が追いつけなかったのも無理はありません。


農家さんの声を聞いてみてみると。

数字やデータで話すのも大事ですが、私が米屋として一番リアルに感じているのは、農家さんの”肌感覚”です。

ある農家さん(60代・長野)はこう言っていました。

「今年やっと少し価格が上がったけど、数年前まではほんとにしんどかった。機械の修理代だけで吹っ飛ぶんだから」

また別の農家さん(50代・山形)からは、

「息子には継がせたくない、って思ってた時期があった。今は少し変わってきたけど、それでもまだ不安だよ」

この声が、今の日本の農業の現実だと思います。


食料安全保障という視点——他人事じゃない話

「それって農業の話でしょ?」と思った方、ちょっと待ってください。

日本のカロリーベース食料自給率は約38%(2023年)。

つまり、食べているものの6割以上が海外に依存しています。

その中でも、お米は唯一、自給率がほぼ100%に近い主食。

でもこのまま生産者が減り続けたら……?

たとえば台湾有事や大規模な気候変動、輸送ルートの遮断などが起きたとき、

「お米だけはある」という安心感が消える日がくるかもしれません。

お米の問題は、農業の問題じゃなく、私たち全員の「食の安全保障」の問題です。


私たちに何かできることはある?

「でも、消費者の私に何ができるの?」という声が聞こえてきそうです。大きな政策を変える力はなくても、日々の選択は積み重なります。

  • 国産米を選ぶ——輸入米ではなく、国内農家さんが作ったお米を買う
  • 顔の見えるお米を買う——産地・農家さんが明確なお米を選ぶ
  • 価格が上がっても「高い!」と切り捨てない——適正価格への理解を深める
  • 食べ残しを減らす——これだけでも需給の安定に貢献できます

「一消費者として農業を支える」なんて大げさに聞こえるかもしれませんが、

日々の買い物の積み重ねが、農家さんの「続けよう」という気持ちにつながると、本気で思っています。


それでも、私たちはやり続ける。

うちの会社はお米の業務用卸をメインにした事業ですが、10年前にリテールチャネル【米伍代目善太郎】を立ち上げました。「楽しむためのお米を売る店」として。食の多様化が進む中、主食でもあり嗜好品でもあるお米を、もっと楽しんでもらいたいという想いから始めました。

今は正直、仕入れがまったく安定しない状況。新規のお客様のご要望にお応えできず、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

でも、ずっと支えてくれている取引先のお客様には、絶対にご迷惑をかけたくない。今は「安定供給を最優先」で、農家さんとの信頼関係を頼りに、毎日仕入れに奔走しています。

これまで積み上げてきた農家さんとの絆、素敵なお客様との繋がり——この財産があるから、どんなに荒れた状況でも、乗り越えていける。そう信じています。


私たちの願い。

「これからも、みんながお米を美味しく食べ続けられる未来をつくること」

農家さんが安心してお米を作り続けられること。皆さんが美味しいお米を「当たり前」に食べられること。

そのために、今できることをコツコツと。

「農と食卓の架け橋」——これが私たちのコンセプトであり、使命です。


おわりに

ここまで米屋としての視点で令和の米騒動についてお話ししてきましたが、

もちろん消費者の皆さまにも様々な思いがあると思います。

お米の価格が上がり、これまで当たり前に買えていたものが気軽に手に取れなくなった

と感じている方も少なくないでしょう。

「少しでも安いお米を探したい」
「お米の消費を控えようか」

そう考えてしまうのも、無理のないことだと思います。

毎日の食卓に欠かせないお米だからこそ、家計への影響は小さくありません。

一方で、生産者の皆さんも肥料や燃料、資材価格の高騰など厳しい環境の中で、お米づくりを続けています。

消費者にも、生産者にも、それぞれの事情と苦労があります。

私たち米屋は、その両方を知る立場にあります。

だからこそ願うのは、お米の価格が高いか安いかだけではなく、

生産者が安心してお米を作り続けることができ、

消費者も安心してお米を食べ続けることができる、そんな持続可能な環境が築かれることです。

令和の米騒動は、一時的な価格の問題だけではなく、

日本のお米の未来について改めて考えるきっかけだったのかもしれません。

これからも現場にいる一米屋として、お米を取り巻く状況を見つめながら、

その時々に感じたことをお伝えしていきたいと思います。

テレビ放送:【コメの販売店社長「減反政策の影響が吹き出してしまっている」】もぜひご覧ください。


最後まで、読んでいただきありがとうございます。

テレビで放送されました。よろしければ、ご覧ください。

【コメの販売店社長「減反政策の影響が吹き出してしまっている】

この記事は令和の米騒動、当時の状況を基に執筆したものです。

現在は流通状況や需給環境が変化している部分もあります。

当時現場で感じていたことを記録として残しています。

2025年2月執筆

2026年5月 一部加筆修正